とても観光地にあるとは思えない不気味な古いトンネルを抜け、雑木林の遊歩道を歩きます。薄暗い林の中にもところどころに西日が差し込み、まるで木々それ自体が発光しているかの様にも見えました。
黄昏の丘から南の方角に目をやれば、縞模様が美しい断崖絶壁と大海原を望み、反対を振り返ると鵜原海水浴場のある穏やかな湾が見えます。「半島がさらに幾つの岬もち海東西の外におほかり」と、与謝野晶子が鵜原で詠んだ短歌のとおり、外海と内湾の風景が対をなし、なんだか「外房」と「内房」を同じ場所で見ているかのようでした。 
毛戸岬で寺本先生に会いました。私とは逆に、先生は手弱女平の方から歩かれていたので、毛戸岬で先生と私とがすれ違うような恰好になりました。海に向かって先生は左手、私は右手の、お互いが先に見てきた岬を指さし、その景色のすばらしさを伝えて各々次の岬へ向かいました。
3へ続く