投稿者: 行政書士 松島 明子
2014-07-29
平成26年6月28日、「会社法の改正について」と題して、定時総会基調講演会が開催されました。講師には、野村修也先生(中央大学法科大学院教授)をお招き致しました。野村先生は会社法のほか保険法や運送法など商法全般に渡って研究実績があり、またテレビ番組にも出演するなど多方面で活躍していますが、今年から中央大学陸上部の部長にも就任されました。著名な先生の講演ということで、会場は満席を超えて補助席も足りないくらいでした。
今回の会社法改正は、平成22年から審議が開始され平成26年6月20日に可決・成立しました。改正のポイントとしては、現在の委員会設置会社の外に監査等委員会設置会社が創設されたことです。現在の委員会設置会社(改正法では「指名員会等設置会社」といいます)には、指名委員会、報酬委員会、監査委員会が設置されていますが、前二者はもともとあまり機能していなかった点を考え、指名委員会等設置会社における監査委員会や監査委員の権限を超える権限を付与された監査等委員会を創設して(指名員会等設置会社には監査等委員会を置くことはできません)、ガバナンスの充実と監査等委員会設置会社の活用を図りました。
また、監査役会設置会社には社外取締役を置く規定はありませんでしたが、改正後は、公開かつ大会社である監査役会設置会社であって、その発行する株式について有価証券報告書の提出義務が課される会社においては、社外取締役を置かないときは「置くことが相当でない理由」の説明義務が規定され、同時に社外取締役の機能・要件も見直されました。社外取締役の要件の中で、現在では過去に一度でも雇用関係があれば社外性に当てはまらない規定でしたが、それでは選択肢が狭くなってしまうということから、就任前10年間という規定になりました。また、利益相反という観点から親会社関係者は除外されました。親会社関係者はまさに利益関係にあり、海外では除外要件であるが日本では除外されていなかったことに、認識の違いがあったことを指摘されました。
このようにガバナンスの充実を図ることで、海外からも信頼され、外国人投資家が投資しやすい環境となること、そして日本企業の企業価値向上につながるのではないかということでした。
私たち行政書士が業務を遂行するうえで法律の知識は必要不可欠なものです。会社経営の基本となるのはやはり会社法等の法律を知ることであり、法改正内容を敏感に察知することはとても重要です。今回の講演を拝聴し、改正の大きな要素である企業統治の在り方にについて、深く考えさせられました。条文だけではなかなか見えてこない、全体の仕組みを知ることができ、大変有意義な講演でした。
( 行政書士 松島 明子 )