特別レポート

「TPPと行政書士」開催報告

投稿者: 常任幹事 桑田優

2013-08-26


 平成25年6月22日、当会顧問で中央大学法科大学院教授・副学長で当会顧問の佐藤信行先生をお迎えして、講演会「TPPと行政書士」を開催しました。
 講義の前半は、TPP及び他の経済連携協定のしくみと背景、そして後半はTPPの行政書士業務への影響と展開、という内容でした。

 まず、TPP自体はシンガポール・ブルネイ・チリ・ニュージーランドの4か国ですでに発効しており、そこに中国の東南アジアへの進出をけん制しようとするアメリカが参加した、という背景についての説明がありました。
 日本は関税廃止を目的とするFTAの締結にはやや出遅れましたが、経済連携協定であるEPAは積極的に締結し、諸外国に引けを取らない2国間交渉を行っているとのことです。逆にアメリカは、カナダとの2国間に複雑な事情を抱えていることが、先生のご専門の「カナダの公法研究」の経験より言及されました。

 そして、TPPが行政書士制度や業務に与える影響と、今後の行政書士業務の展開についての講義となりました。
 ここで佐藤先生は、「TPP交渉に参加している国々の法システム」に着目し、英米法系(コモンロー)と大陸法系(シビルロー)を採用している国を比較し、コモンローを採用している当事者国が多いことを指摘されました。つまりTPPは、法システムすなわち「ルールづくり」の主導権をどこが握るか、という交渉でもあるわけです。
 なぜなら取引の当事者間で法システムが共通であれば、契約コストや紛争解決コストがより少なくなるからです。
 このことは、私たち行政書士が契約書作成業務において「準拠法」をどの国の法律にするかといったことにも気を配るなど、顧客が海外と取引する場合の契約スキルを上げることにより、国際取引業務への展開可能性も示しています。

 さらにTPPが日本に与える影響の一例として、韓国の「行政士制度」を引用して説明されました。日本の行政書士制度に類似した韓国の「行政士」になる資格を有するのは、今まで実質的に公務員の退職者に限定されていましたが、2013年から国家試験により行政士になる道が開かれました。行政士制度改正の背景には、2012年発効の「韓米FTA」の影響、すなわちアメリカから韓国の法律職への進出可能性も指摘されています。

 TPPというと農業ばかりが注目を浴びていますが、行政書士としては、今後はよりグローバルな視点が求められるということが理解できました。そして、斬新な視点からTPPを捉えなおした先生の講義により、私たち行政書士業務の今後のあり方に貴重な示唆をいただいたことに感謝しています。

  

(行政書士 桑田優)



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